ライブサウンドインスタレーション
この間、やってみたかったこの新しい試みが4月29日、小倉・中島のすてきな古着屋さん「ブルーミーデイズ」のイベントで実現した。
「インスタレーション」は現代アートの手法・表現のひとつ。
作品は単に鑑賞の対象として展示されるのではなく、その空間を構成したり、変容させたりする要素として配置され、人々はその作品が組み込まれた空間に身を置いたり、そこを移動したりする事で作品によって意味や質を変化させられている空間そのものに参加する。場や空間全体が、そこに関わる人たちの存在や行動ごと、出来事・現象・体験としてアートとなるように何かをそこにインストールする(組み込む)こと。
それを、音でするのがサウンドインスタレーション。
BGMと違うのは、そこに用いられる音が、始まりから終わりに向かう音楽的構造、時間的性質を持たない点。まとまりをもった曲として音楽を鑑賞することではなく、その空間の体験が目的であるため、曲としての構造へと意識を向けさせる事は目指されない。むしろ永続的で、空間的性質を持つ音や響きが求められる。
そんなわけでここでは既存の、みんなが親しみを持つ曲がそのまま使われることはない。たとえば日本の音風景の中に古くからみられる風鈴や、鹿おどし、そして手水の滴りが庭に埋設された壺を響かせる水琴窟なども、古くからある日本のサウンドインスタレーションだ。
そして通常、あらかじめプログラミング・録音された音をコンピューターやその他の音響装置によって会場で鳴らしたり、音が鳴るものを会場に配置したりするかわりに、現場で実際に音を作り、ライブで演奏しながらこれをやってみたいと考えたのだった。
コンサートやライブの場合、演奏者の演奏を聴衆が聴く、という形をとる。演奏者の主体的な表現行為を聴衆が客体的に受け取り、鑑賞する。けれど、ライブサウンドインスタレーションにおいて演奏は、基本的に鑑賞の対象として設定されず、従って「聴衆」の存在も前提されていない。耳を傾けられなくていいのだ。
イベントは午後一時から夜8時まで計7時間。実際に演奏を聴いてもらうコンサート形式の2回のライブタイムを除き、その他の五時間ほどはずっと、その空間とイベントそのものと響き合う音を鳴らし続けた。
少し音を出しては、それを録音加工し、不規則に変化しながら空間に静かに配置されていくように設定する。時折会場を歩いて音や響きが人々の動きや空間全体とのバランスで過不足が無いようチェック、調節。随時音を新しいものに入れ替え、空間の響きの色合いを変える。決して音が立ち、耳を引き寄せることのないように。それでも当日はそれがリアルタイムで演奏されている事に気づくお客さんが何人もいたと言う。まだまだ、だ。
次回は教会の古本市で。6月11日の土曜日は午前11時から夕方6時までの7時間、翌6月12日の日曜日は2時から6時の4時間を使って。
みんなに、本との対話の、静かでゆっくりしたひとときを過ごしてもらいたい。そのための、音・響きによる時と空間を。
どうぞお楽しみに。
(記)会計担当 U.N(2022年5月22日の週報より転載)
古本市については、コチラもご覧ください>>
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